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身体で思いを形にするワークショップblog

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「こうなってほしい!」「そのためには、今どうすればいい?」そんな思いを、「体で感じる」ことを重視しながら表現するワークショップの進行役(ファシリテーター) まつぞうのblog

左目のまばたきだけを手段に本を書く!負けてられへん ・・・映画「潜水服は蝶の夢を見る」

「海を飛ぶ夢」の感想を書いたらaさんにこれを薦められて見てみると・・・なるほど。この2作品は併せて見る価値あり。
とても似ている部分と、くっきりと違う部分もクリアに見えてきて、対比がとても面白い。

いつも以上にネタバレ多めの感想を書きますが、それだけいろいろ書きたいという刺激を受けました。

「潜水服」は、心筋梗塞で左眼を除いて全身が動かなくなってしまった男の物語。

意識はクリアなのにそれを表現する手段がまったくないその男自身の視点から物語ははじまっていくので、周りの声は聞こえていて、周囲の問いかけに答えているつもりなのに、声は出ておらず、男の心の声は観客には聴こえるけれど、周囲の人たちには聴こえていないという状況からスタート。

男の当惑はリアルに実感できた。これは困るよ。

右眼も見えているのに、まばたきができないから、このままでは乾いてしまってまずいと、医者たちは右眼を縫い合わせてしまう。男が「おい、やめろ!」と心で叫んでいるのに、声は届かず、縫合完了。

意志があるのに表現できない・・・というのがいかに痛いか、とてもリアルに感じられた。

言語療法士が来て、左目のまばたきしかできない男とのコミュニケーション方法を確立していく。

最近は眼球の動きで文字入力できる機械もあるみたいだけど、この物語の1997年当時のフランスではそういうものがなかったらしい。
なので、フランス語のアルファベットの使用頻度の多い順に「e,s,a・・・」(確か最初3つはこうだった)と順番に読み上げていくので、「これだ」というところでまばたきをするという、原始的なコミュニケーションスタイルが採用される。

最初は読み上げが遅すぎたり早すぎたりすると感じても、男からそれを伝えるすべもなく、まどろっこしくて、男はめげそうになる。

もともとがファッション誌「elle」の編集長という華やかな世界にいた男は、最初は「なんでこんなことに」とネガティブモードに入りがち。
ま、そりゃそうだわな。そこまで華やかな世界にいなかったとしても、そうそう受け入れられる状況ではない。
毒づいたり、あきらめそうになったり、そんな男の心の声がリアル。

男の視点からの映像は、映画館で見たら酔ったんじゃないかと思うように、視野が狭かったり、ピントがなかなか合わなかったりしてるから、なんともリアル。

けれどもやがて男は、この状況を受け入れて、前向きに生きていくようになる。

大きかったのは本を書こうという方向性。

もともと出版社と本を書く話をしていたので、家族に頼んで電話してもらって、筆記する人に来てもらい、執筆することになった。

この展開が、本を書こうとしている僕には響いたなぁ~。

PCに向かいすぎて肩は凝ってるとはいえ、満足に動く身体でいるのに、いろいろ引っかかって執筆が進んでない自分が、なんだか恥ずかしくなってしまったよ。

書きたいという意志さえあれば、まばたきだけでも書き進んでいける。もちろん周りのサポートは必要だけれど。けれど意志あるところに道は開ける。自分もうかうかしては折れんな、と思いました。


「海を飛ぶ夢」の主人公は、四肢不自由でも言葉はしゃべれたし、同じように本も出版しているのだけれど、生きているのがイヤになって死を選んだ。なんといっても30年近く家族の介護を受けっぱなしという状況がこらえきれなかった。
「潜水服・・・」の方がコミュニケーションの自由度は明らかに少ないけど、幸か不幸かそこまで長く生きられなかった分、「生き切った」というように受け取れて、より希望が感じられる物語になった。
これが20年、30年続いていたら、それでも希望を持って生き続けられたんだろうか?と、見終わってから考えてしまう。「海を飛ぶ」同様に絶望から死を望むことになったかもしれないのかな?と。

ところがどっこい27年間経過した「閉じ込め症候群」という記事を発見。この映画の主人公と同じ病名。ただし、首は振れるということで若干症状は軽いみたい。ヘルパーさんの力を借りながら自立生活を送っているという。すごい。

希望に目を向けるか、絶望に目を向けるか、人それぞれですね。

そして希望と絶望と対照的な2つの映画が、どちらも「夢」をタイトルに含んでいるのが興味深い。原題・英題ではなく日本語タイトルの時点で「夢」はついてるんですが、身体は動かなくても想像力があればどこへでもいける・・・ということの象徴が「夢」なんですよね。

そう、想像力。やっぱ大事だよなぁ。

自由が利かない部分と、利く部分が誰にもあって、利かない部分を嘆きだすと切りがないんだけど、利く方に目を向けていけば、どんな状況でも希望を失わずに生きていけるし、想像力を働かせれば、無限の自由がある。深海に閉じ込められたような状況からも、野に舞う蝶を夢見ていられる。

さて、頑張って本書かなきゃ!という気にさせてくれるよい映画でした。

純粋にフランス映画だと思ってみたら、アメリカ映画だと知ってビックリ!監督さんの名前が英語っぽくないし、気づかなかった。

非英語圏を舞台にして、非英語をしゃべるはずの人たちが出てくるのに、英語しゃっべてるってパターンのアメリカ映画が少なくない中で、これは珍しいなぁ~。

いろいろ感心させてくれて、勇気もくれました。ハマらない人もいるだろうけど、個人的には大ハマりだ。★9
by matsuzoh2002 | 2009-03-10 13:14 | 見た映画

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