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身体で思いを形にするワークショップblog

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「こうなってほしい!」「そのためには、今どうすればいい?」そんな思いを、「体で感じる」ことを重視しながら表現するワークショップの進行役(ファシリテーター) まつぞうのblog

「自爆攻撃」する/しないの紙一重 …映画「パラダイス・ナウ」

パレスチナを舞台にした、自爆攻撃に向かう二人の青年の物語。

「自爆テロ」と無自覚のうちに書きそうだったけど、この映画の公式サイト『「自爆テロ」「自爆攻撃」 に関する表記について』という問題提起があり、
「自爆テロ」と称する時には、テロという言葉の持つ意味から、極悪な犯罪のイメージが付加されているように思われます。特に不特定多数の民間人を巻き込んだ場合がそうです。ただ、戦時下において民間人を巻き込むという事だけでいえば、空爆やロケット弾による爆撃の方が遥かに多くの民間人を巻き込んだ殺人を起こしているのも事実です。高価な兵器での殺戮を「攻撃」、安価な自爆による攻撃を「テロ」と称しているのが日本のメディアです。
というのを読んでなるほどな、と思い、今回は「自爆攻撃」と表現します。

イスラエル側からすれば、恐るべきテロとしか思えないのも、また真実なのだろうけど。
しかし、イスラエル軍の「攻撃」もパレスチナ側からすれば、恐るべきものであり、圧倒的な武力の差から、甚大な被害を受けるのはパレスチナの方だろうし。

アカデミー賞の外国語映画賞ノミネートの後、自爆攻撃被害者のイスラエルの遺族から、受賞に反対する運動が起こったそうだ。
その気持ちも分からないでもない。運動が影響したのか、結果として受賞はなかったそうだ。

イスラエル/パレスチナの間には、圧倒的な力の差があり、それゆえの絶望感がパレスチナを覆っている。
この映画は、自爆攻撃を賛美してる訳ではない。自爆攻撃に反対する立場も描かれていて、バランスが取れてると感じた。描かれてるのは、自爆攻撃へと向かう背景。そこに説得力を感じた。

冒頭、イスラエルからパレスチナに入る検問のシーンから映画は始まる。特に何かが起こることもないのだが、微妙な緊張感が伝わってくる。
去年イスラエルを旅した時に、僕も検問を通過したのだが、あまり緊張感を感じなかった。外国人観光客という立場の気楽さ。なんせ、パスポートをホテルの荷物の中に置き忘れた(*_*)まま、通過できたくらいだったから…。車から降りなくてよかったし。
検問所にいたのは、入国審査管などではなく、イスラエル兵なのだったが、あまり印章に残ってない。気持ちが「パスポートのないことを悟られませんように」という方に向いてたせいだろうか…
むしろ、この映画の方が検問所にいるのはイスラエル兵なんだ!という事実をリアルに感じられた。立場を変えて追体験した感じ。

イスラエルのワールドワークでも、検問についての話題が真っ先に取り上げられたのを思い出す。パレスチナからの参加者達が持ち掛けた話題だった。ワークの会場はイスラエル側だったから、パレスチナの参加者は全員が検問をその日の朝に通過して来てたはず。
そして、イスラエル人と僕も含めた外国人加者達は会場に泊まれるのに、パレスチナ人参加者には、一部の例外を除いてそれが認められず、みんな帰らざるを得なかった。
立場の違いによって、泊れる人/帰らねばならない人がくっきり分かれてしまう。占領によってあまりに不平等な扱いがまかり通ってしまう。

その不平等に対する鬱憤が映画からも伝わってきました。

自爆攻撃に向かう若者は、まるで「明日急な出張頼む」というような感じで、前日に自爆攻撃の決行を言い渡される。事前に意思の確認はあったのだろうけれど、今日の明日、突然実行・・・というのが衝撃だった。

日常の延長線上の紙一重のところにある自爆攻撃。

また、特に、この映画で印象的だったのは、この映画を通して「密告者」の存在を知った。イスラエルの占領によって経済的に困窮するパレスチナで、報酬と引き換えに同胞の情報をイスラエルに密告するスパイとなるパレスチナ人の存在。あまりにせつない。

監督のインタビューによると、この映画で描かれている当時よりパレスチナの困窮は深刻さを増しているらしい。

この映画に描かれているような、自爆攻撃者がイスラエルへ潜入できるような「スキ」は、イスラエルが建設を進めた強固な「隔離壁」(イスラエルがいうところの「安全壁」)の建設によって、どんどんなくなってしまっているはずだ。

反撃したいというパレスチナ人の気持ちに理解できる部分もあるのだが、圧倒的な力の差は、ますますパレスチナを窮地に追い込む結果になってしまう・・・。

なんだかまとまりのない感想になってしまってますが、昨年訪れたイスラエル最大の都市テルアビブの海岸が映っていたりして、胸に迫るものがありました。

イスラエル滞在では、パレスチナの現実があまり感じられなかった・・・という感じが強かったのが、この映画で少し埋められた気分です。

ひたすら重いだけの映画ではありません。

シナリオがよくできていて、どうなっちゃうの?とヒヤヒヤする展開があり、なんでそういう行動を取ったのか・・・というのも最終的に腑に落ちるように出来ています。

その辺りを評価して☆8.5くらいかな。おススメです。
by matsuzoh2002 | 2008-03-17 00:25 | 見た映画

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