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身体で思いを形にするワークショップblog

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「こうなってほしい!」「そのためには、今どうすればいい?」そんな思いを、「体で感じる」ことを重視しながら表現するワークショップの進行役(ファシリテーター) まつぞうのblog

イスラム社会の伝統と現実のはざまで「性」はどうなってるのか垣間見る ・・・本「神の棄てた裸体」

サブタイトルは「イスラームの夜を歩く」。

個人的には、以前書いたように、イスラム社会の伝統の締め付けのきつさは、イスラエル/パレスチナのワールドワークで多少垣間見ることができました。そこで見たのは恋愛に対する締め付けでしたが、この本はさらなるタブーであろう、そんなイスラム社会の「性」にまつわるノンフィクション。

イスラム社会の性で思い出すのは、タイ南部のサトゥンという町にワークショップの見学に行ったときのこと。
その町には空港はなく、別の町(ハジャイ)にある空港から車で1時間という辺鄙な町なのだが、ホテルに日本人を発見。
なんでこんな所に?と思って話を聞いてみると、イスラム教国のマレーシアでは女を買えないので、タイまで来たとのこと。空港はないサトゥンだが、船でマレーシアのランカウィ島には行けるのだ。

タイ、特にバンコクは何かと誘惑が多い。三輪タクシーに乗ったら艶かしいチラシを渡されたりとか。
それより前に、マレーシアにも行ったことがあるけど、そういう誘惑はあまり感じなかった。

やはり仏教国とイスラム教国の違いなのだろうか。

・・・そんな体験を思い出しながら、この本を読むと、いきなりインドネシアの少女売春婦のお話。
・インドネシアの宗教的戒律は緩め = 幼い売春婦は以前から存在
しかし
・国際的に人身売買や売春強要が問題視
・イスラム原理主義の台頭
→政府売買春摘発強化 →幼い売春婦はスラムへ潜行

・・・ということのようで。

これがさらに戒律の厳しい、パキスタン・ペシャワールに行くと、少年の男娼が目立つという。女性の娼婦もいるが、自由に出歩けない分大っぴらに行動できる男性娼婦が増えるという。アフガニスタンからの難民がそれを行なっているという。

・・・そんな感じで、どこにいっても売春は存在するし、生きるための手段としてそれが必要とされていることが、いろいろな国で描かれている。

同じペシャワールでは「女として生きることを選んだ男」、「ヒジュラ」についても描かれる。
インド文化圏全体でヒジュラという存在はあるようで、インドでもアウトカーストな存在らしいけど、イスラムにも存在するのは驚き。

さらには、マレーシアでも「レディボーイ」と呼ばれる「女として生きることを選んだ男」の話が登場。ヒジュラは伝統的な存在だが、こちらは日本で言う「ニューハーフ」な感じ。

ここに出てくるレディボーイはインドネシア人。

そんな風に、国境を越えて生きる人たちの話も興味深かった。
ヨルダンのイラク人。レバノンのフィリピン人(ミンダナオ島はイスラム圏)。

国境のはざ間で生きる人々の話も、興味深かったり、イタかったり。
ミャンマーは仏教国のイメージが強いけど、ロヒンギャと呼ばれるイスラム教徒も存在して、弾圧されてバングラデシュで難民化しているのも知らなかった。バングラデシュも貧しい中で、ロヒンギャが受け入れられない話(ロヒンギャは直接出てこない)は、痛々しかった。

イランのクルド人集落の話は過酷な背景もありながら、微笑ましかったり。

パキスタンの「名誉殺人」の話はかなり衝撃的だった。伝統の掟って、なんとむごい!と思う。

また、インドではイスラム教徒は少数派だが、それでも十一億の人口の中で一割強いるので、一億人以上いるという指摘だけでも驚いた。インドネシア、パキスタンの次にインドが多いのだそうだ。人口対策として不妊手術が奨励されて、補助金が出るというインド。それをめぐる切ない話。
さらには、子どもができない妻は、虐待されたり、自殺に追い込まれたりするインドで、そんな不妊の女性たちに不妊治療の薬を作って渡す男の話。イスラム教徒が少数派のインドで、ヒンドゥ教徒による強姦が多いのに、少数派ゆえに警察に訴えるのもあきらめるいう話は、なんとも痛い。

そして最後のバングラデシュの売春を生きる手段としているストリートチルドレンの少女の話はせつない。誘拐→人身売買も多発する環境。幼い頃から売春を生きる手段として、大人になってもそのれを続けていく。貧困の出口があるとは思えない状況。



1つ1つのエピソードが生々しく、多くは痛々しい状況の中で、それでも人は生きてるのだなぁ・・・と、読後感は重くもあり、いろいろな世界を垣間見られて興味深くもあり。

身近にとらえようとすれば「重く」、一歩引いて眺めようとすれば「興味深い」・・・そんなところでしょうか。

筆者の石井光太さんは30歳の男性で、この本では2つの目的として「イスラームの"禁圧された性"の掘り起こし」と「自分に何ができるかためしたい」ということがあったそうで。

掘り起こされた物語は、どれも興味深く堪能し、考えさせられました。

「何ができるかためしたい」・・・という部分については、「そんなこと試さないで、客観的に記録することに務めたらいいのに!」という思いがする場面もあるのだけれど、でも、そのように働きかけを試みることが、日本で暮らす僕の意識を書かれている現場へと近づけ、ヒリヒリ・ヒヤヒヤとした感覚を起こさせる効果につながっていると思う。

石井さんののサイトには、本には載せ切れなかった写真と、書ききれなかった文章が載っていて、お得感がある。

興味深い本でした。石井さんのもう1冊の本も読んでみようかな。
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by matsuzoh2002 | 2007-12-13 13:44 | 最近読んだ本