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身体で思いを形にするワークショップblog

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「こうなってほしい!」「そのためには、今どうすればいい?」そんな思いを、「体で感じる」ことを重視しながら表現するワークショップの進行役(ファシリテーター) まつぞうのblog

伝統は守ればいいってもんじゃない ・・・映画「クジラの島の少女」

ニュージーランドに行ったことはないが、オーストラリアでニュージーランドの人にはお世話になった。

そんなご縁もあって、ニュージーランドの映画を見てみる。

先住民、マオリの映画だ。

オーストラリアの先住民、アボリジニとどうしても比べてみてしまう。

Wikipediaのマオリの項目によると、マオリ諸部族の代表者がイギリス政府と条約を締結したうえで、主権をイギリスに譲渡した・・・という経過があるのだね。

もっとも、そのワイタンギ条約というのも、現在に至るまで、条文の解釈の相違等によって、両者の対立を生んできてるようですが・・・

けれども、オーストラリアの場合は、そもそも主権の譲渡などないままに、イギリスが「ここ、うちらのもの!」と言ってしまったわけで、だいぶ状況が違う。

ニュージーランドの方が小さい分、諸部族のまとまりがあったことが、状況の違いを生んだのかもしれないな・・・という気はする。

マオリ語はあるのに、共通の「アボリジニ語」って無いようだし。
マオリ語は公用語にもなっているのだなぁ・・・知らなかった。

・・・で、以上のような歴史的な話は、この映画では特に出てきません。

出てくるのは、現代のマオリの生活と、伝統・神話について。

上記、Wikipediaのマオリの項目を見ると、「ハワイキ」から伝説の航海者がカヌーで来たのが、マオリの起源・・・ということのようだが、この映画に出てくる地域では、「クジラに乗ってきた男=パイケア」が、神話として語り継がれているということだ。

神話に基づいて、族長として伝統を継承してきた保守的なじいさんが、思うように後継ぎが生まれない・育たないのに苦労する。そして生まれた女の子の物語。

・・・なんか途中で、皇室の事を思い浮かべたんだよなぁ。状況は、かなり似ている。

<以下、ネタバレ>

じいさんは頑固!超保守的。
気持ちわからないでもないが、観ててかなり腹も立ってくる。

冒頭、出産シーンなのだが、双子のうちの男の子は死産で、母親は命を落とし、女の子だけが産まれてくる・・・という状況。

妻を亡くした夫=父親は当然嘆き悲しんでいる。
そこへ父親の父親=じいさんは、「男の子はどうなった?」と入ってくる。

「妻を亡くして悲しんでいる時に、跡取りのことしか、考えてへんのかい!」と、じいさんの長男=女の子の父親はキレる。

跡取り=男、それも長男!・・・という伝統に反発するせいか、長男は、伝説のクジラに乗ってきた男の名前、パイケアを娘の名前にする・・・と、じいさんの反対を押し切って決定。

長男は家を出て、ドイツでアーティストになる。

じいさんは、最初はがっかりしつつも、孫娘パイケアに女の子として愛情を注ぐ。
でもそれはあくまで「女の子」としての愛情。

じいさんは、自分の血筋にこだわることをあきらめ、地域の男の子、それも長男たちを集めて、跡継ぎを養成することにする。
パイケアもそこに加わろうとするのだが、「女は後ろで見てろ!」

パイケアは棒を使った武術にも興味を示すが、じいさんからは排除される。
でも、おじさん=じいさんの次男に教えてもらう。
次男ではダメなんだなぁ・・・じいさん。

じいさんの行動には腹が立つが、それでも、帝王学を伝授されている男の子達をひきつける力がある。
それを見てると、ちょっと、がんばれ!っていう気にもなる。

「パイケアは無意識のうちに自分とクジラのつながりを知っている」・・・かのように、時折クジラの映像が挟み込まれる。
夜寝てる設定ではないのだけれど、夢に見ているかのように、出てくるクジラ。

じいさんは男の子達から1人に絞る課題を出す。
でも結局全員達成できず。
じいさん、心底落ち込む。完全に鬱状態。

パイケアは、学校の発表会で、スピーチコンテストで優勝したスピーチを披露。
優勝した事は、驚かそうと思って、じいさんには黙ってたのに、会場にじいさんはいない。

「私が女に生まれてきてことで、伝統が途切れてしまいました。

 でもそれは誰のせいでもありません・・・」

その頃じいさんは、浜にいた。
クジラが何頭も浜に打ち上げられていた。
学校に向かう途中に見つけてしまったじいさんは、茫然と言う。

誰のせいだ?」

方向感覚を失ったクジラが浅瀬へ迷い込むのは、日本でもたまにニュースになるので、リアリティはある風景。
でもここではまるで、方向感覚を失ったじいさんそのもののようだ。

誰のせいでもないんだって!

パイケアのスピーチは続く

「みんなで伝統を学んで、みんなで一緒にやっていけばいいと思います。
 1人で伝統を守ろうとしても、疲れてしまいます。
 (伝説の)パイケアも1人で海を渡ってくるのは、大変だったと思います。

 愛するおじいさんのために、伝説のパイケアの歌を歌います」

涙でつまりながら、ようやく歌うパイケア・・・

・・・
 
・・・学校から戻った村人達もじいさんに合流し、夜を徹してクジラを救う試みを続ける。

パイケアは、自分がクジラを「呼んでしまった」のをわかっていた。

でもクジラに触れようとしたら、じいさんに止められた。

村人達は「1頭が海に戻れば、他も戻るはずだ」と、トラクターや、綱をクジラにかけたうえでの男達の綱引きの力で、方向転換を試みるが、ダメだった。

徹夜疲れで、いったん村人達は休憩に入ろうとする。

パイケアはクジラに触れる。
「クジラは死のうとしてるんだ」・・・パイケアにはわかる。

そして、クジラにまたがって、乗った。

クジラは息を吹き返し、海へと戻っていった。

「死ぬのは怖くなかった」とパイケア。
そのままクジラに乗って海へ・・・

死ぬのか・・・?

長らく未完成のままだった大型のカヌーを、父親(一時的にか知らないけど帰ってきた)が完成させたようで、盛大な儀式とともに、みんなで漕ぎ出していく。

パイケアは生きてた。じいさんと一緒にカヌーにいた。

「みんなで力を合わせれば、未来を築いていける」

・・・族長の家系だけで、抱え込んでると、誰のせいでも無いのに、一人で抱え込んで、鬱になっちゃう。

みんなでやればいいんだよ・・・というメッセージ、しかと受け取りました。

パイケアにはミラクルな力があるけど、その力に頼ったストーリー展開も、マオリは神話の民だろうし、OK!

伝統だからって、固執して、力のあるものをみとめないのは、もったいないし、つまんない!

じいさんの気持ちもわからないでもないけど、やっぱり、長男の立場が一番感情移入してしまったよね。

伝統が立ち行かなくなったら、固執しないで、創り直せばいいやん!
伝統自身も、最初は創られる過程があったあとで伝統として定着したわけで、それを忘れて、「守る」ばっかりじゃ、滅びて当然。

そう思いました。
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by matsuzoh2002 | 2006-06-09 12:41 | 見た映画